GLPの交通シミュレーション手法について考える_2
今回は、なぜ「動的シミュレーション」を行うべきなのかについて考えてみたいと思います。
動的シミュレーションと静的シミュレーションの比較
国土交通省が進めてきた『道路交通アセスメント検討会』の資料:「道路周辺の土地利用による影響の予測手法、対策メニュー、モニタリング」の中で、「動的手法は静的手法に比べ、多様なファクターを考慮することが出来、より実態に近い予測が可能」と記載され、その比較として下記記載がありました。
内容を見ると、共にそれぞれの手法に長所短所がありますが、事例として気になる記載がありました。静的シミュレーションだけでは安心できないようです。
静的手法での課題事例
静的手法での課題事例として、「実際に静的手法による予測が間違った判断につながった可能性があると共に、動的手法で行った場合、ほぼシミュレーション通りに渋滞の発生が確認できた」という報告があるようです。
○静的手法による予測(大店立地法の届出書)では、
→単一交差点部分の交差点需要率の算出結果 として
周辺交通への著しい悪影響は無いと判断 されたようですが、
○交通シミュレーションによる予測 では、
→シミュレーションでの交差点の滞留状況から渋滞を確認 され、
○開業後の状況(目視による確認) では、
→ほぼシミュレーションと同じ個所で渋滞が発生 していたとのことです。
動的シミュレーションを採用すべきなのかどうか
それでは動的シミュレーションを採用すべきなのかについて考えてみたいと思います。
国際交通安全学会出版の「交通・安全学」において、大規模開発の交通シミュレーションとして動的シミュレーションの紹介に栃木県の事例が記載されていました。
栃木県に於ける動的シミュレーションを行う場合の要件として改めて「大規模小売店舗の立地に係る交通流動予測について」を見てみると、下記記載がありました。
交通流動の予測・評価を実施する要件
自動車の交通が周辺道路における交通に著しい影響を与えるおそれがあると見込まれる場合には、設置者は、対応策の事前評価を行うため立地後の交通流動を予測することが必要である。
そして「周辺道路における交通に著しい影響を与えるおそれがある」場合とは以下の場合とする。との記載があります。
- ピーク時1時間当たりの来台数(以下「ピーク時来台数」という。)が600台以上となることが予想される場合
- ピーク時来台数が、200台以上、またはピーク時1時間当たりの道路の1方向当たり来台数で100台以上となることが予想される場合であって、店舗立地形態と周辺交通量との関係で周辺道路に混雑のおそれある場合
さて、今回のGLP計画は大型小売店ではありませんが、上記の動的シミュレーションを行うための要件に当てはめて考えてみると次のようになります。
① ピーク時1時間当たりの来台数からは動的シミュレーションが求められる。
- GLP公表の車両流入量は合計:5,800台
- 8時頃に集中して昭島市に侵入してくるとしています。
- 敷地への入り口は3か所なので、侵入車両数は 5,800 ÷ 3 ≒ 1,933台
ピーク時来台数は600台をはるかに超える台数であることから、「周辺道路における交通に著しい影響を与えるおそれがある」ことになり、動的シミュレーションが求められます。
②ピーク時来台数からも、動的シミュレーションが求められる。
- 侵入車両数は1,933台です。
ピーク時来台数が、200台以上、またはピーク時1時間当たりの道路の1方向当たり来台数で100台以上とあることから、上記の入口への進入車両数 約1,933台を2方向、3方向から来たとして考えても、200台をはるかに超えることは明白ですので、動的シミュレーションが求められることになります。
今回調べてみて、昭島市の交通量調査の公表データでは朝7時半~8時過ぎの詳細な交通量の調査結果は記載されていませんでしたので、上記①②の計算には加味しませんでしたが、GLPの公表データだけでも十分に「ピーク時来台数」を超えていることから、動的シミュレーションが求められるものと思います。
ましてやGLPの計画では、合計5,800台(内訳:大型車両:1,100台 普通車:4,700台(内普通乗用車:20~30%)としており、大型車両が1,100台、普通車と言っても4トン以下のトラックが3,000台強も見込めるのですから大変です。
結論は動的シミュレーションを採用すべきです。
GLPは静的シミュレーションを行うとしていますが、以上のことから動的シミュレーションを行うべきと考えます。
今回のGLPの計画は昭島市の交通環境を破壊することは間違いないと考えられる状況であるにも関わらず、何故「動的シミュレーション」を採用しないのでしょう。
動的シミュレーションの解析事例は何度もテレビで紹介されており、我々素人にも目でその動きを確認できるので理解しやすいと思われます。
また、GLP説明会の場に於いて、父兄の方から「子供達の通学は8時頃がピークだが、GLPの施設への集中する時間帯は何時頃なのか」という質問に対し、GLPは「同じく8時ごろ」との回答がありました。
集中する時間帯が同じであることを考えると、交通事故の未然防止対策のために目に見える対策が望まれると共に、動的シミュレーションによる目に見える資料の提供が必要だと思います。
以上のことから、より市民に丁寧な説明を行うためにも動的シミュレーションの採用が必要だと思います。
ところで、昭島市は事業者に対し動的シミュレーションの導入を指導しているのでしょうか。もししていないのであれば、昭島市に対し実施の確認とお願いが必要です。
次回は「何故動的シミュレーション」を行うべきなのかについて別の視点で考えてみたいと思います。
我々市民は「市長への手紙」を通して市への意見、市への要望を出すことで少しでもGLP計画が改善されるように働き掛けましょう。
守るべきは「市民生活」であり、「子供たちの命」「高齢者の命」なのですから。
次回は
「GLPの交通シミュレーション手法について考える_3」
をご覧ください。
市長への手紙を書きましょう。
下記のリンクから直接送ることができます。
https://www.city.akishima.lg.jp/form/002/001.html
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